瑞浪市立瑞浪中学校合唱発表会

顕在化した集団基盤の脆弱性



2015年12月9日に瑞浪中学校の合唱発表会を取材しました。同校の合唱を語る上で欠かせないキーワードは「ブレス」,「音価」,「余韻」であると言えるでしょう。そして同校の合唱の最大の特徴は,1年生から一生懸命取り組むことが出来るという点です。ほとんどの中学校は,1年生→2年生→3年生というように,学年が上がるにつれて合唱に対する意識や技術が向上しますが,同校は1年生から感動的な合唱を披露してくれるので,毎年遠方から来る甲斐があります。本年度の1年生の「My Friends」,2年生の「空駆ける天馬」,3年生の「はじまり」はどれも完成度が高く,本年度に取材した中学校の中では最も感動的な合唱でした。その記録については,ご要望があれば掲載しますのでどうぞご連絡ください。


 2011(平成23)年1月28日午後,瑞浪市総合文化センター(岐阜県瑞浪市土岐町)文化ホールにおいて,瑞浪市立瑞浪中学校(同)の合唱発表会が開催された。
 筆者が同校の合唱を鑑賞するのは,2010(平成22)年11月17日に開催された瑞浪市小中学校音楽会以来,2ヵ月ぶり4回目となる。「響け我等の集大成 〜仲間と奏でる学級合唱(ストーリー)〜」というスローガンの下,各学級,学年で取り組んできた合唱を披露した。
 前年度も同校の合唱発表会に足を運んだが,今回は前年度に比べて全般的に合唱に対する意識や合唱そのものの質がやや低下していたように感じた。最初の全校合唱「HEIWAの鐘」では,「ラ」で始まる冒頭の8小節のフォルテが意識されておらず,迫力に欠ける歌い出しになっていた。そのため,「今年は大丈夫だろうか」と,この後に披露される各学級,学年の合唱に対する一抹の不安を抱いた一方で,「この不安は杞憂(きゆう)だろう」と楽観的に受け止めるようにも努めたのだった。


全校  「HEIWAの鐘
1年B組  「旅立ちの時

1年C組  「手のひらをかざして
1年D組  「怪獣のバラード

1年A組  「未来へのステップ
1年生  「Let's search for Tomorrow

2年B組  「心の瞳
2年A組  「地球の詩

2年D組  「新しい世界へ
2年C組  「COSMOS

2年生  「空駆ける天馬
3年A組  「河口

3年C組  「決意
3年B組  「信じる

3年D組  「
3年生  「青葉の歌


 1年生は学級ごとの格差が顕在化していたのだが,全体的には女子に比べ男子が頑張っていたという印象を受けた。変声期の最中のためか,音程が不安定ながらも一生懸命に声を出している男子のいる学級もあれば,全体的に声が小さく,歌っている人と歌っていない人の差が大きい学級もあった。このように1年生は学級ごとの格差がある,すなわち学年としての一体性,まとまりがないため,学年合唱「Let's search for Tomorrow」ではそうした「一体感の喪失」が露呈していた。ステージへの登壇は迅速にできており,さらに代表者がスピーチの中で「1年生全員で歌います!」と宣言してくれたため,学年合唱が始まる直前には「ひょっとしたら…」という期待感も沸いたのだが,実際には声,口ともに小さい人が大半で,およそ「合唱」とは言えるようなものではなかったため,思わず肩をすくめてしまった。

 2年生は,1年生ほど学級ごとの格差は感じなかったものの,全体的に声や口が小さく,表情も暗く,さらに強弱の表現も曖昧であった。学年合唱「空駆ける天馬」では,強弱も意識しつつ,全体的にもう少し迫力があれば良いと感じたが,合唱に参加している人は多かったため,学年としてのまとまりは概ね感じられた。ただ,1年生だった前年度の学年合唱「Let's search for Tomorrow」に比べれば,集団としての基盤が弱体化していたのは否めない。学年合唱だけではない。学級合唱に関しても,1年生だった時の方が合唱に対する意識が高く,一生懸命取り組めていた。本来であれば学年が上がるにつれて合唱に対する意識や質も向上させることにより,成長を感じさせなければならないのだが,それができていなかったのは残念である。

 3年生は,学級ごとの格差がなく,どの学級も大きな声や口で合唱できており,各パートの美しいハーモニーを響かすことができていた。さすが最上級生と思える,貫禄のある見事な合唱で,1,2年生の後輩達の模範であった。学年合唱「青葉の歌」からも一体感が感じられ,特に最後の「心を」の部分の強弱の表現が見事で,フォルテからフォルティッシシモに移った瞬間,深く感動させられた。


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【最終更新】2016年1月1日