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「君が明日と呼ぶものを」は,高音と低音に分かれた二部合唱。児童らは体を左右に揺らしてリズムをとりながら,大きな口で表情豊かに歌うことができていたほか,深くブレスをすることができていた。
出だしの「今 君が見ている夢はどんな夢ですか」の部分は,優しく語りかけるように歌うことができていた。また,「はじまりの種の一粒が いつか森になる 誰もが誰かを支えながら 想いは形になる」の部分のオブリガート(助奏)の抑制的な声量が,逆に主旋律を強調することができていた。
さらに,歌詞を大切にしているのを感じた。例えば「空」,「すべて」,「抱きしめて」,「教えてくれる」などの子音「s」(サ行)が明瞭に発音できていた。また,「君が明日と呼ぶものを」の部分の「が」と「あ」は同じ母音「a」が連続することから発音が曖昧化しがちだが,「がー」と長く伸ばさずに短く発音されており,続く「明日」を強調することができていた。最後は「アー」で終わるが,この部分の高音が特に美しく響いていた。
合唱が終わり,2曲目の合奏が始まるまでの時間に一部の児童の立ち位置の移動があったが,粛然と動くことができていたほか,移動しない児童は体勢を崩すことなく聴衆の方に視線を向けることができていた。
「はばたけ,未来へ」は,大半の児童が担当する楽器はリコーダーであったが,大太鼓や小太鼓,木琴などの打楽器もあった。また,前奏と間奏には4名による鍵盤ハーモニカが主旋律として登場。
リコーダーは2つのパートに分かれていたが,この曲のテンポはアレグロであるため,全般的に指遣いが速く,正確さが求められる。特に主旋律は,冒頭の部分に最大7音もある小節が含まれているが,間違えることなく正確に吹くことができていた。また,リコーダーを見ながらではなく,指揮者に注目しながら吹く児童も多くいた。
筆者がこれまでに鑑賞した小学校の合奏曲の中で,リコーダーの指遣いが最も速い曲は,「情熱大陸」だったと記憶しているが,今回の「はばたけ、未来へ」は,それに次ぐ速さであった。
今回は合奏であるため,歌詞が歌われることはなかったが,この曲の2番の中に「応援してると ミナモが歌う」という歌詞がある。ちょうどこの部分で,にわかに体育館前方の扉から国体のマスコットキャラクター「ミナモ」が出現し,会場を沸かせた。たちまちミナモは聴衆に手拍子を促し,演奏を盛り上げていた。
なお,この曲は「輝け はばたけ だれもが主役」という歌詞から始まるが,このフレーズは「ぎふ清流国体・ぎふ清流大会」の合言葉でもある。それぞれの選手が主役となって輝いてほしいという願いが込められているわけだが,これはスポーツの場面に限らず,今回のような合唱や合奏においても同様に重要な要素ではないだろうか。主役は決して指揮者ではなく,演奏する一人ひとりである。その一人ひとりが輝くことによって全体の一体感が生まれ,感動的な演奏をつくることができるのではないだろうか。
今回の新宮小学校の演奏は,まさに一人ひとりが主役となって輝いており,感動した。今度は最上級生となる6年生に成長した時に,ぜひ彼らの演奏を再び聴きたい。今後も音楽に対して