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【学級目標】 Best Friends 〜一人一人を大切に笑顔が輝く1組〜 | |
入場時の返事がやや遅れたが,一人ひとりが決然たる声で返事ができていた。1列目より順にステージに登壇していた。女子の表情が明るく,男女の声のバランスが良い。一部の人だけではなく,一人ひとりがきちんと声を出しているのが伝わった。「HEIWAの鐘」は歌詞の多い曲だが,一語一語明瞭に発音できていた。「心の瞳」は2年生向けの曲ではあるが,見事に歌い切れていた。「君だけが今では」の部分のクレッシェンドが表現できていた。全校のトップバッターに相応しい,一体感のある合唱だった。 |
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【学級目標】 勇往邁進 ―クラス全員で磨き合い,突き進む4組― | |
3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。3列目の男子の中に深くブレスをする人がいた。「旅立ちの時」では「アー」の部分の男子の口が小さかった。また,三連符の表現が曖昧だったが,「夢をつかむ者たちよ」の直前のクレッシェンドが表現できていた。「遥か」では,男声が主旋律になる部分の歌詞の発音がやや不明瞭であった。合唱終了直後の指揮者の礼がなかったが,混乱することなく降壇できていた。 |
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【学級目標】 CLEAR 〜理想を求め関わる〜 | |
3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。男女の声のバランス,まとまりが良い。「3月9日」では,サビの前のクレッシェンドや,「瞳を閉じれば」からの部分のp(ピアノ)が表現できていた。 |
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【学級目標】 仲間と支え合い常に進む4組 | |
大きな声で返事ができていた。3列目よりパートごとにステージに登壇していたが,全員が同じ向きに回転することができていた。「君をのせて」では男声の「さあ出かけよう」の部分が迫力があった。男声の音程が不安定な部分もあったが,一人ひとりが安心して声を出せる雰囲気があった。最後の「僕らをのせて」はもう少し音を伸ばせると良い。1列目の右から2人目の男子(「Tomorrow」の指揮者)の表情が非常に明るい。「Tomorrow」では,「抱きしめていよう」の部分のクレッシェンドを感じた。全般的に強弱を意識していたのが伝わった。「運んできてくれるだろう」という歌詞があるが,男声の「だろう」の部分が力強く歌えていた。着席時は「4組着席」という号令があり,全員が一斉に着席できていた。 |
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【学級目標】 全身全霊 | |
男子が大きな声で返事ができていた。3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。女子は大きな口で歌うことができていた。「走る川」では,「戻れないいのちを」の部分の強弱の表現ができていた。全般的にやや緊張感に欠ける印象を受けたため,子音をさらに意識して言葉を明瞭に発音することが求められるだろう。
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【学級目標】 LEGEND 〜全員で向き合う安藤組〜 | |
男子が大きな声で返事ができていた。3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。「手のひらをかざして」では冒頭のブレスが概ね揃っていた。「流れる涙 手でぬぐった(指のすき間をこぼれていく)」の部分のクレッシェンドや,その直後の「大きな手 小さな手」の強弱が表現できていた。また,「いっしょに過ごした時に」の直前の休符が意識できていた。「Story」では発音が明瞭にできていた。大きな口で歌う男子が数名いた。「ひとりじゃないから」より無伴奏になったが,その直前のしばしの沈黙が印象的だった。聴衆を圧倒させる「伝説」の合唱であった。 |
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さすが合唱部というだけあって音楽的なレベルが高い。まるでコンクールのような緊張感が漂っており,学級合唱の時とは全く異なる会場の雰囲気を感じた。1列あたり6〜7人とほぼ同数で,隣の人との間隔を開けて並ぶことができており,視覚的な美しさを表現できていた。 |
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この曲の歌詞には「フィナーレ」や「さようなら」という言葉があり,卒業式で合唱されることが多い曲だ。男性職員の返事の声が大きく,合唱に対する意気込みを感じた生徒らからは「頑張れ」等の声援が送られていた。曲の最中も,時折生徒らの笑いを誘う場面があった。もともと女性職員に比べ男性職員が多い学校ということもあってか,男声の声量が圧倒的であった(これまでに様々な中学校の職員合唱を鑑賞してきたが,他校と比較しても加納中学校は男性職員の比率が高い。ちなみに同校区内にある加納小学校も同様に男性職員の比率が高かった)。音楽的な技術力は別として,大きな声で一生懸命に歌う姿からは,生徒らに模範を示そうとしたのが伝わった。 |
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【学級目標】 協働 努力 向上 〜仲間を思いやり,仲間と共に積み重ねる〜 | |
男子が大きな声で返事ができていた。パートごとにステージに登壇していた。男女の声のバランスが良く,大きな口で歌うことができていた。「COSMOS」では「百億年の歴史が今も体に流れてる(みんないのちを燃やすんだ 星のように蛍のように)」の部分のクレッシェンドの表現は曖昧だったが,その直後の「光の声が」からのf(フォルテ)は表現できていた。「怪獣のバラード」では,伴奏者も歌いながらピアノを弾いていた。砂漠から脱出して人間に会いたいという怪獣の気持ちを,迫力のある合唱で見事に表現できていた。最後の「ヤ!」の残響が印象的であった。 |
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【学級目標】 喜怒哀楽 〜仲間を心から信頼できる2組〜 | |
男女ごとに3列目→1列目→2列目という順で登壇していた。「明日への扉」では冒頭のブレスが揃っており,一体感を感じた。「見つめていたい ほほえんでいたい」の部分の男声が明瞭に発音できていた。また,男声の「二人のメロディ」からの部分が力強く歌えていた。その直後の「抑えきれない この気持ちが」からの強弱も見事に表現できていた。「明日へ」ではアルトパートが存在感を発揮できていた。「ぼくらは走り出す明日へ(ぼくらは大人になっていく)」の部分のmp(メゾピアノ)がきちんと表現できていた。「時の流れ」,「遠く高く」のフレーズはブレスをせずに歌えるとなお良い。退場時は降壇する姿が美しかった上,全員が一斉に着席できていた。 |
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【学級目標】 奏合 関わり合う3組 | |
女子が大きな声で返事ができていた。3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。女子は大きな口で表情豊かに合唱できていた。「チェリー」では,ソプラノの中に明るく大きな声の女子が1名いた。1曲目の「Best friend」では彼女の声は聞こえなかったため,恐らく1曲目の指揮者か伴奏者ではないかと思うが,やや彼女に頼りきっている印象を受けた。着席時は全員が一斉に着席できていた。 |
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【学級目標】 極め導く 〜仲間と限界に挑む4組〜 | |
男子が大きな声で返事ができていた。3列目より順にまずステージの床に整列した上で一斉に登壇。ステージへの並び方が工夫されており,「OMNIBUS STAR 〜光年の旅〜」ではテノールがソプラノとアルトを囲むようにコの字型に並んでいた。 「OMNIBUS STAR 〜光年の旅〜」では,「誰も明日は知らないけれど」の部分等,随所にクレッシェンドがあった。最後の「君の瞳の中に」と「いく千億もの星も輝くよ」の間の沈黙が印象的だった。「今」では,「夢をつかむ人がいる」の部分にクレッシェンドがあった。「今を生きる喜びを」からのテンポの変化が表現できていた。「時代をかける」からの部分は,4名のソロが登場。直後の「ラ」の部分では無伴奏になり,手拍子があった。その直後の「今を」の部分だけ急にテンポが遅くなったが,各パートが乱れることなく揃っていた。最後の「勇気にかえて」の部分は力強く歌い上げられていた。着席時は全員が一斉に着席できていた。 |
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【学級目標】 一緒懸命 〜1人はみんなのために みんなは1人のために 共に挑め3組〜 | |
男子が大きな声で返事ができていた。3列目より順にステージに登壇していた。1列目の右端の男子の姿勢が美しい。1列目の女子と2列目の男子が特に大きな口で歌うことができていた。「空高く」は前奏がない曲だが,歌い出しから見事に揃っていた。それだけにブレスが深く,一体感を感じた。最後の「未来へ」の部分は,強弱を意識しつつ,十分に伸ばすことができていた。「My Own Road」では冒頭のブレスが揃っていた。最後の「明日へ続くこの道を」の部分が力強く歌えており,前向きに生きていこうとする意志が伝わった。 |
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【学級目標】 究極 ―自分達を磨き突破し続ける― | |
男子が大きな声で返事ができていた。男女ごとに3列目→2列目→1列目という順で登壇していた。「あなたへ」では,冒頭のmp(メゾピアノ)が表現できていた。終盤の「手と手をつなぎ」からのテンポの変化が表現できていた。ソプラノが特に明瞭に発音できていた。1列目の女子が大きな口で歌えていたほか,3列目の男子が深くブレスできていた。 |
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【学級目標】 The ONE | |
男子が大きな声で迅速に返事ができていた。3列目より順にステージに登壇していた。「We Are The World」の歌詞は英語だが,明瞭に発音できていた。男女混合で並んでいたが,それは恐らく,男女の枠を越えて学級が一丸となった姿を表現するためではないかと解釈した。別のパートの人と隣同士になるため,うまく音程が取れなくなる可能性があり,合唱する上では不都合が生じるが,同じパートの仲間に頼らず,自ら声を出すことの重要性を訴えてくれたのかも知れない。パートごとに整列して合唱しなければならないという既成概念を打破した革新的な学級で,全校の「取り」に相応しい合唱と言えよう。 |
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YSK (野外総合活動) |
体育祭 |
学習発表会 |
文化集会 |
このように,合唱は学級文化を表現するための手段とする解釈は個人的にも支持している。先述の通り,多くの学校が10月〜12月に合唱を披露する行事を開催しているが,最も望ましい開催時期は,加納中学校のように2月であると考えている。2月は年間を総括する時期に入るため,4月から学級で築いてきた文化の集大成を披露することができると同時に,その学級文化の根拠とも言える学級目標にどこまで迫ることができたかを検証することができるからである。
3月に入ると卒業式や入試も迫っているため,さすがに日程的にも不都合な上,そもそも3年生にとってはそうした心理的に不安定な時期に合唱に取り組むことは困難だろう(ちなみに最も遅い学校は卒業式の1週間前に開催していた)。したがって,年間で合唱を披露する行事を開催できる最後の時期は,2月ということになる。
以下に,開会式の中で披露された学校長の話を載録する。文化集会が4大行事の集大成であると同時に「学級文化の表現の場」であると認識していることがうかがえる。
加納中学校が「学級」という単位を重視していると考えるもう一つの根拠は,各学級が披露する合唱の曲数が,1曲ではなく2曲だという事実に求めることができる。1学年1学級の小規模な中学校の場合は,「学級=学年」ということもあり,各学級2曲ずつ披露するのが一般的であるが,1学年に複数の学級を持ち,かつ各学級2曲ずつ披露している学校は,筆者がこれまでに鑑賞してきた学校の中では他に存在しない。極めて稀有なケースと言えよう。
たいていの中学校では,一人の生徒が歌うのは学級合唱,学年合唱,全校合唱が各1曲の都合3曲である。これに対して加納中学校の場合は学級合唱2曲,全校合唱1曲(校歌斉唱も含めれば2曲)の都合3曲であり,一人の生徒が練習する曲数は同じである。ただ,実際の練習において,最も力を注いで取り組むのはやはり学級合唱だろう。学年合唱や全校合唱は,学級単位で練習することもできるが,本番同様に学年や全校の仲間が集まって練習する機会は限定的だからである。そうなると必然的に,合唱披露の最小単位である学級での練習,すなわち学級合唱の練習に最も力を注ぐことになるのである。加納中学校ではそんな学級合唱を2曲練習することになるため,曲数が他校と同じとは言え,他校以上に合唱練習に時間を費やしてきたことだろう。
さらに,ほとんどの中学校では1年生→2年生→3年生というように,学年の枠を維持しながら1年生の学級から順に学級合唱を披露するのが一般的である。例えば1学年2学級の学校であれば,1年A組→1年B組→2年B組→2年A組→3年A組→3年B組というように,同学年の全学級の合唱が済むまで次の学年には進まないのである。ところが加納中学校では1年生学級合唱→2年生学級合唱→3年生学級合唱と進むと,再び1年生学級合唱→2年生学級合唱→3年生学級合唱という順序が繰り返されるため,学年の枠が撤廃されている。今回の場合を挙げると,1年1組→2年4組→3年1組→1年4組→2年2組→3年2組→という順である。このようなプログラム進行をする学校は,筆者の知る範囲では他に存在せず,稀有なケースと言える。
一般的に,学年が上がるにつれて合唱の技術力も向上する学校が多い。そのため,学年の枠を維持して進行すると,会の最初から最後まで合唱を聴いた者にとっては,終演直後に「1年生より2年生,2年生より3年生の合唱が良かった」という感想を抱く可能性があり,学級よりも学年全体としての方が印象に残りやすくなりがちである。
これでは各学級の文化が曖昧化してしまう恐れがあるため,学年の枠を撤廃することにより,「学年」よりも「学級」としての印象を強調しようとした狙いがあるのではないかと考えられる。
入退場において筆者が注目するポイントは,以下の4点である。
(1) 返事の声の大きさ |
(2) 私語の有無 |
(3) ステージへの登壇,降壇の仕方 |
(4) 着席の仕方 |
A入退場時,特にステージ上で私語をしてしまうと客席からも見えるため,その後の合唱に対する期待感が持てなくなってしまう。歌い手の私語は,聴き手の私語も誘発し,会場全体の緊張感が緩んでしまう。逆に歌い手が私語をしなければその緊張感が聴き手にも伝わり,「真剣に聴かなければならない」という雰囲気が生まれるものである。自分達の合唱を聴いてほしいという想いがいかに強いかが問われる。歌い手はステージに登壇したら仲間の顔は見ずに,真正面から視線を動かさないようにすることが大切である。降壇する時も同様だ。指揮者が指揮台から降りた瞬間に私語をしてしまうのではなく,合唱時の緊張感を持続させながら,無言で自分の席まで戻ることが大切だ。
B学級合唱の場合,3列に並んで合唱するのが一般的であるが,ステージに登壇する方法には,1列ずつ順に登壇する方法と,3列一斉に登壇する方法とに大別される。ステージへの登壇は,ピアノがある下手側(ステージから見て左側)から行うのが一般的である。前者の方法については,どの列から順に登壇すると美しく見えるか,ということが問題になるが,個人的には最後列,すなわち前から3列目より順に登壇するのが美しいと考えている。1列目が最初に登壇すると,2列目以降の通路を塞ぐ,あるいは狭めてしまう場合があり,スムーズな登壇が困難となるからだ。したがって3列目→2列目→1列目という順に登壇するのが望ましいだろう。逆に降壇する時は1列目→2列目→3列目という順が望ましいだろう。
一方,後者の方法については,まず1〜3列目の全員がステージの床(最下部)に整列した上で,180°回転して一斉に登壇する方法である(岐阜県下では各務原市の中学校の多くがこの登壇方法を採用していた)。個人的には前者の方法よりもこちら方法が,学級文化を表現する上では適していると考えている。それは,全員が一斉に行動することによって学級の一体感が伝わるからである。なお,登壇する際には回転する向きに留意する必要がある。全員が同じ向きに回転することがポイントである。つまり,時計回りか反時計回りのいずれかに統一すると美しく見えるため,一体感をより強調することができるのである。加えて,登壇の際には全員の足並みを揃えるとさらに美しく見えるため,どちらの足から歩き始めるのか,予め決めておくと良いだろう。
C着席時は,自分の座席の前に到着しても直ちに着席するのではなく,学級の仲間全員が到着してから一斉に着席することが望ましい。それは,学級の仲間を大切にしているということを示すことができるからである。自分達の文化を表現する最後の瞬間である「着席」まで,いかにこだわることができるかが問われる。
加納中学校の文化集会は2008年以降,10年連続で取材しています。その記録については,ご要望があれば掲載したいと考えていますのでご希望の年をお知らせください。